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2014年12月22日月曜日

Buona sera 5

  「あんなに毎回たくさん書いていたら、あっという間にネタ切れになっちゃうよ。」と常連さんに言われた。確かに毎日厨房の中にこもってフライパンを振り続けている私にとって、これと言って新しいことの起こりようもなく、人様にご紹介する話題に事欠くことも十分に予想していました。
  しかし私には皆様にお話ししていない秘密兵器があったのであった。

  しばらくは私どものメニューについてお話をさせていただきましょう。

①パルマ産プロシュット


 
  メニューの最初を飾るプロシュット。
生ハムです。
  テンダロッサが店を始めたころは、イタリアのハムは当時の厚生省の外国食材への無理解から、輸入許可が下りておらず、やむなくスイス製を使用した時期もありました。

 イタリアには何か所か著名なプロシュットの産地があり、中でもパルマとサンダニエレは2大産地として知られています。
 

  イタリアでは自国の生産物の信用を高めるために、該当製品の生産地、伝統的製法に基づく生産、加工法を守ること、さらにその製品の性質がその地域の要素に由来していることなどの厳しい基準を設けています。
  パルマにおける生ハムも基準を満たしていないものは「パルマ」という名前を使うことは許されません。

  もともと古代ローマの時代から愛されてきたこのハムは、北イタリアのエミリア・ロマーニャ州のパルマ地方の南部丘陵地帯でのみ作られ、この地方の気候風土が独特の甘味やナッツ香さえ感じさせる風味をもたらします。手仕事の伝統的製法は豚のモモ肉1本丸ごとをサラトーレと呼ばれる塩漬け職人によって塩漬けされ、約100日間寝かされることに始まります。
さらに風乾室でまた100日間風に当て熟成させます。
その後切り口にラードを塗り、熟成庫で手入れを重ねつつ1年から長いものは2年の時間をかけます。
こうして出来上がったハムはマークの入れ墨、王冠マークの焼き印、メタルのシールなどが施され出荷されます。
日本やアメリカの大量生産製品との違いはその製造にかける時間と手間でありましょう。

  イタリアの人は「薄く切れ」とうるさく言います。豚肉と塩と空気と時間とだけから作り出された風味をより十分に楽しむためです。
テンダロッサでは本来の風味を壊さないように、ご注文の都度、厨房の出入り口にあるスライサーで1枚1枚丁寧にスライスしてご提供いたします。ぜひお試しください。

追伸
  健康のためにと脂身を敬遠なさる方がよくいらっしゃいますが、生ハムの脂身にはオレイン酸、リノール酸などの不飽和脂肪酸が圧倒的に多く含まれ、むしろこれを召し上がるほうが血管疾患等の予防につながるといわれています。健康に良いイタリア料理の「理由その1」はここにありました。
つづく